湯葉寅の朝は早い。まだ夜も明けぬ朝靄のしじまの中、町家の天窓から大豆の香り豊かな湯気が立ち上っています。
原料の大豆は、前の日から水につけておきます。早朝5時前から始め、豆乳のできる5時すぎには湯葉を引き上げはじめます。次から次に張ってくる湯葉をタイミングよく引き上げていかないと一定の品質を保てません。目の回るような忙しさです。
作業に火を使いますので、夏は40度を越え蒸気で湿気が多く、サウナのようです。冬は京の底冷えの中、湯気で一メートル先が見えないほどです。コンクリート床からの底冷えで足の先が、かじかんできます。
恵まれた京の湧き水と厳選された大豆、このシンプルな素材を伝統の技で、「はんなりとした京の美味」に造り上げていくのです。